作品紹介

【ボーカロイド曲を紹介していく連載】第10回~ドラムンベース

みなさんこんにちは。

ボーカロイド曲を紹介していく連載企画、第10回目は<ドラムンベース>です。


■ドラムンベースとは

ドラムンベース(Drum and bass)は表記揺れや略称が多くあるジャンルで混乱してしまいそうなのですが、英語表記では「Drum 'n' Bass」「Drum & Bass」「DnB」「D&B」「D'n'B」などがあり、日本語表記では本稿で使用している「ドラムンベース」のほかに「ドラムン」「ムンベ」と呼ばれることがあります。

音楽的な特徴としては高速で複雑なブレイクビーツ、ベースやドラムなどの強調された重低音などが挙げられます。

おもに音楽ジャンルのジャングルから発展したと言われており、このジャングルもまたレゲエから発展しています。ジャングルはレゲエのレコードを早回ししたことがはじまりで、レゲェの歌声やコンガなどの音が入っています。初期のジャングルはレゲェの要素が強く、「ラガジャングル」と呼ばれています(たとえば、下記"Original Nuttah")。そして、このラガジャングルのレゲエ要素が抜けたものがジャングルとして定着していきます(たとえば、下記"Kunta Kinte")。

またジャングルはUKに広まり、「UKジャングル」として定着していきました。ベース部分を強調したミックスが施されており、女性ボーカルやラップが乗るものもあります。"Universal Love"のようなジャズ要素を取り込んだものもあり、「ジャジージャングル」や「ジャズステップ」とも呼ばれたりします。ここまでくると、かなりドラムンベースの雰囲気に近いものがあります。こうしたUKジャングルから上記のドラムンベースへと派生していきました。

 


■ボーカロイドとドラムンベース

ボーカロイドが用いられているドラムンベースはnico nicoでは主に<ドラムンベース><ボカムンベース>および<ミックンベース>というタグで共有されています。それぞれが自由にタグ付けしているので、どれかに統一されているというわけではないようです。検索してみると<ドラムンベース>が約200件、<ボカムンベース>が約400件、<ミックンベース>が約400件ほどヒットするので、全体としてはおよそ1,000曲ほど作品があると思われます。

niconicoに投稿されている作品はこちらから探すことができます。

<ドラムンベース>のキーワード検索
<ボカムンベース>のキーワード検索
<ミックンベース>のキーワード検索

ボーカロイドが用いられているドラムンベース、というよりはドラムンベースというジャンルをボーカロイドのリスナーに広く認知させるきっかけとなった作品は、おそらくmillstonesさんの"計画都市"(2009.12.15)だと思います。21秒のキックの音で驚く人や1分22秒をかけて徐々に展開していくイントロを長いと感じる人が多く話題となりましたが、それよりも筆者は抜けが良くクリアな音に驚いた記憶があります。この曲よりも以前にドラムンベース的なアレンジを施している曲がヒットしていますが、ドラムンベースとしては受け取られていなかったような印象です(例えば、"炉心融解"(2008.12.20)や"眠り姫"(2009.8.17)など)。

"計画都市"のイントロではテクノのように少しずつ変化していくような展開でしたが、テクノやアンビエントを得意とするDaisuke Ohnuma(大福P)さんの"偶像無線"(2013.1.16)もまた、9分2秒をめいっぱいに使って様々な変化を見せる作品です。KAITOの爽やかな歌声もよく合っています。

また、ピアノやシンセが乗った浮遊感のある曲という点では、nana(Sevencolors)さんの"chameleon"(2011.6.3)などがあります。nanaさんはドラムンベースのコンピレーションを主宰するなど、ドラムンベースをはじめダンスミュージックで精力的に活動されています。

ドラムンベースの印象が強い作者というと、やはりHizuru(mirgliP)さんが挙げられます。初投稿作品の"Between the sheets"(2010.12.23)はブラスの音を派手に使った華やかなドラムンベースですが、きれいなメロディで優しい印象も受けます。このようなドラムンベースはそのサブジャンルである「リキッドファンク」と呼ばれたりもします。2014にリメイクされたバージョンではその傾向がより強く表れています。

また、"Between the sheets"のブラスの音からジャズっぽさを感じる人もいるかもしれませんが、tom_atomさんの"シーケンスライフ"(2010.11.10)でもオルガンとハイハットがより印象的に聞こえる間奏部分からジャズっぽさを感じるかもしれません。

ドラムンベースのなかでもベースが強力でより攻撃的な作品もあります。例えば、鼻そうめんPさんとざにおさんの"Desperate"(2014.6.26)や、かめりあさんの"君が死ぬのを眺めているよ"(2012.2.28)などがあります。どちらもダブステップのような歪んだベースが目立って聞こえてきます。

他にはドラムンベース的なブレイクビーツを一部に取り入れている例として、お家(氷夢P)さんの"+0℃"(2013.7.31)やLemmさんの"nATALIE"(2011.4.7)などがあり、どちらもエレクトロニカやクラシックなど多ジャンルを横断する高度で複雑な作品です。このドラムンベースの記事でピックアップしてよいか迷いましたが、このような例もあるよということでとりあげました。

 

以上、ボーカロイドによるドラムンベースでした。

それではまた次回。

/しま

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