みなさんこんにちは。
ボーカロイド曲を紹介していく連載企画、第1回目は<テクノポップ>です。
■テクノポップとは
テクノポップというと、みなさんはどんな曲をイメージするでしょうか。
ボーカロイドが歌う曲でテクノポップというと、kz(livetune)さんの"Packaged"(2007.9.25)のようなイメージが浮かぶ方が多いと思います。キラキラした派手な雰囲気で、ポップでノリがよい曲調の曲ですね。
第一線で活躍しているアーティストの例をいくつか挙げると、2007年に"ポリリズム"で全国的に名が広まったPerfumeや、2011年に"PONPONPON"でメジャーデビューしたきゃりーぱみゅぱみゅあたりがすぐに浮かぶと思います。
この両者をプロデュースしているのが、音楽プロデューサーの中田ヤスタカです。
Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの曲では、キラキラした派手な音色や加工された声などが特徴として挙げられます。先ほど紹介したkz(livetune)さんの"Packaged"も、Perfumeの"ポリリズム"と同様に初音ミクの歌声にオートチューンによる加工を施しており、またそのサウンドもキラキラとした派手なポップな曲調の曲で、中田ヤスタカのサウンドと共通する部分がいくつも見受けられますね。こうした曲調のテクノポップは、従来のテクノポップからの流れとクラブカルチャーからの両方の流れを汲んだ新しいテクノポップとして捉えられています。また、中田ヤスタカが生み出した独自のスタイルでもあります。
テクノポップの歴史を振り返ると、ドイツの音楽グループであるクラフトワークがリリースしたアルバム『Autobahn』(1974年)や『Man Machine』(1978年)、1980年頃の細野晴臣・高橋幸宏・坂本龍一によるYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のブームまでさかのぼります。聴いてみるとわかると思いますが、上記のようなテクノポップとはかなり印象が異なります。たとえば『Man Machine』ではボコーダーを通したボーカルが聞こえてきますが、シンセサイザーのひとつひとつの音に耳を傾けられるほど非常にシンプルなつくりです。ここでは詳しい説明を省きますが、テクノポップという言葉が生まれたのはこの頃のことでおもにシンセサイザーを多用した音楽のことを指していました。
ところで、初音ミクなどのボーカロイドはボーカルシンセサイザーとも呼ばれています。初音ミクの左腕に装飾された機材は、テクノポップのムーブメントのなかでもよく使用されていた代表的なシンセサイザーYAMAHAの「DX7」がモチーフとなっていることから、初音ミクはテクノポップの潮流を汲んでいると捉えることもできますね。
Perfumeが"ポリリズム"で全国的に名が広まり、その影響もあってテクノポップへの関心が高まったタイミングで初音ミクが発売。その後すぐに、初音ミクが歌う、新しいテクノポップの流れを汲んだkzさんのオリジナル曲が登場しています。これはエポックメイキングな出来事だったと思いますし、またそのタイミングの一致も奇跡的だと思います。そうしたこともあって、この連載の第1回にテクノポップをとりあげました。
■ボーカロイドとテクノポップ
ボーカロイドが歌うテクノポップですが、「niconico」ではおもに<ミクノポップ>というタグで共有されています。「niconico」で<ミクノポップ>のキーワードで検索してみると、およそ5,000曲もの作品がヒットします。<ミクノポップ>タグを使わずに<テクノポップ>タグを使っている方もいらっしゃいますので、おそらく5,500曲程度かそれ以上の作品があると思います。<ミクノポップ>の再生数上位の曲は初音ミクがボーカルに入っているものが多いのです。
<ミクノポップ>や<テクノポップ>でおもに使用されているボーカロイドを調べてみると、初音ミクがボーカルに入っている曲が断トツで多く80%ほどを占めています。初音ミクに続いて多く使われているのがMegpoid(GUMI)、鏡音リンとなっており、女声ボーカルが上位を占めています。鏡音レンやKAITOなど男声ボーカルが歌うものもありますが少ないのが現状です。
■初音ミクが歌うテクノポップ
初音ミクが歌うテクノポップは、上記のkzさんの曲のように、きらびやかでポップな曲調で初音ミクが可愛く元気に歌うものが多い印象です。RUBY-CATMANさんの"エレキキュレーター"(2014.9.25)やelegumiさんの"KISS ME BABY!!!"のように、明るく可愛いキャラクターを前面に出したMVも特徴的です。
一方で、ポップな曲調とは裏腹に、失恋など寂しげな内容が歌われるU-jiさんの"Chip Tears"(2008.10.15)やmikumixの"LOL -lots of laugh-"(2009.8.25)のような曲もいくつか見受けられます。
また、ここ数年のテクノポップはクラブミュージックとしての側面が強くなっている印象です。たとえば、23.exeさんの"Shelter"(2016.3.17)やhanoさんの"Be Myself."(2016.12.25)のように途中にブレイクを挟んだりしてメリハリのある展開にし、より盛り上がるような構成になっています。
■複数ボーカルによる演出
上記のように初音ミクが単独で歌うものとは異なり、複数のボーカルがいるので代わる代わる歌ったりコーラスとしたりすることが可能です。八王子Pさんの"シューティングスター"は鏡音リン・レンが歌う七夕をテーマにした曲で、ボーカルが2人いるからこそできるテーマと歌唱です。
teaeyeさんの"be with you"(2018.4.27)やemonさんの"shake it!"では、鏡音リン・レンによるかけ声やハモりがパーティー感を演出するのに一役買っています。すんzりヴぇrさんの"六月の窓 "は上記の作品とは毛色が異なりますが、3人のボーカルが複雑に絡まり合いながら進行していく巧みな曲です。
■GUMIが歌う、すこし派手さが抑えられたテクノポップ
初音ミクに次いでよく歌っているのがMegpoid(GUMI)です。初音ミクの声と比べると落ち着いた自然な歌声であるため、花束Pさんの"GIFT"(2011.9.9)やmonaca:factoryさんの"グーパースター"(2014.7.16)などのように、キラキラ感や派手さを抑えたポップな曲調のものが多い印象です。また、FABRICOPOPSさんの"SF"(2015.11.10)はサンバのリズムを軸にピコピコした音が飛び交うテクノポップという異彩を放っている作品です。
ですが、GUMIはジャンルを問わずオールラウンドに歌えるライブラリーでもあるので、EasyPopさんの"ハッピーシンセサイザー"(2010.11.22)のように、他のボーカロイドと組み合わせることで華やかなものでもうまく馴染んでいます。
以上、ボーカロイドが歌うテクノポップでした。
それではまた次回。
/しま