作品紹介

【ボーカロイド曲を紹介していく連載】第3回~ファンク

みなさんこんにちは。

ボーカロイド曲を紹介していく連載企画、第3回目は<ファンク>です。


■ファンクとは

みなさんもどこかで「ファンク」や「ファンキー」という言葉を耳にしたことがあると思います。ですがファンクとは、ファンキーとは何か、という問いに答えるのはなかなか難しいように思います。音楽を聞いて「ファンキーだ」というときは野性的で躍動感のある様子を指したり、奇抜でけばけばしい服装のことを「ファンキー」と言ったりします。諸説ありますが、もともとは「匂い(体臭)」を表す俗語で、それが転じてファンキーな音楽のことを「ファンク」という呼ぶようになったようです。

ファンク・ミュージックの大きな特徴としてリズムが挙げられます。ファンクを広く知らしめたJames Brownの"Cold Sweat"(1967)を聞いてみましょう。16ビートのリズム、カッティングできざまれたギター、短いリフを多用したホーン。これらの楽器が奏でるフレーズが強烈なビートを形成しています。James Brownの伝記映画も語られていたように、ギターやホーンなどの楽器もドラムのように振る舞い演奏するように指示していたという話もあるようです。

さらに、ファンクを説明するのに挙げておきたいのがSly & The Family Stoneです。"Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin) "(1969)を聞いてみましょう。ベースがぐいぐいリードするこの曲は非常にシンプルな構成でありながら、フレーズを反復させることによって身体を揺らしたくなるようなグルーヴを生み出しています。ファンクというとこのような曲を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

他にもGeorge ClintonらによるP・ファンク、Earth, Wind & Fire、Princeなど特筆すべきアーティストはたくさんいますが、書き切れないのでここでは割愛させていただきます。いずれにしても、1970年代には数多くのファンクのアーティストが存在していました。こうしたファンクのサウンドは現代にも脈脈と受け継がれており、近年ではMark RonsonとBruno Marsによる"Uptown Funk"により1970年代のファンクのサウンドが復活しています。


■ボーカロイドとファンク

ボーカロイドが歌っているファンク・ミュージックですが、「niconico」ではおもに<ボカロファンク>というタグで共有されています。「niconico」で<ボカロファンク>のキーワードで検索してみると、およそ570曲もの作品がヒットします。このタグはワウギターの音が入っているポップスやロックにも付いているので、すこしでもファンクっぽい要素が含まれているとボカロファンクとして捉えられているようです。<VOCALOID ファンク オリジナル>のキーワードで検索してしまうとみきとPさんの「いーあるふぁんくらぶ」や「ファンクラブ」の結果も取得してしまうので、ファンクの作品を投稿する際は<ボカロファンク>タグをつけておくと見つかりやすくなりそうです。

<ボカロファンク>キーワード検索

<ボカロファンク>でおもに使用されているボーカロイドを調べてみると、初音ミクがボーカルに入っている曲が多く40%ほどを占めています。初音ミクに続いて多く使われているのが巡音ルカで、20%程度を占めています。これまでに紹介してきたテクノポップやチップチューンでは、巡音ルカはあまり使用されていませんでした。ファンクには大人っぽい歌声が合うのでしょうか。その巡音ルカに次いで、Megpoid(GUMI)、鏡音リンという順になっています。

 

ボーカロイドが歌うファンクというと、haruna808さんの"Melancholoid" (2007.12.06)を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。初音ミクが発売して間もないこの時期に初音ミクの声の可能性を追求した作品が出たということも驚きですが、それがファンクだったということも衝撃的です。ファンクの特徴である短いリフのギターやうねるようなベースライン、ドラムによるシンプルなリズムに加えて間奏部のオルガンがクールです。

オルデルPさんの"Slack"(2010.10.02)やごーぶす/ライチョー隊長Pさんの"生きるってすごい!"(2018.04.26)も上記のようなファンクの特徴を捉えた作品です。"Slack"ではドラムに加えてコンガ(またはボンゴ)などのパーカッションがリズムを作っており、さらにリズムを作ったりメロディを奏でたりとダイナミックに動くオルガンにも耳を奪われます。"生きるってすごい!"ではドラムによるタイトなリズムにのる豊かなホーンの響きがくせになります。


konkonさんの"A.I. (is LOVE FOR MYSELF)"(2010.02.20)では、ボカロファンクでは貴重な男声ライブラリーの「がくっぽいど」が歌っています。がくっぽいどが歌うことで色気と渋さがにじみ出ておりファンクにマッチしています。また間奏部のギターもしびれるほどかっこいいです。

 

■ジャズとファンク

ジャズにファンクの要素を取り入れたものをジャズ・ファンクと呼んだりします。<ボカロファンク>タグにはこのジャズ・ファンクの作品も多く含まれています。Bt Malyさんの"人間パンサー"(2014.01.12)やchet brockerさんの"ABC and 123"(2014.02.25)などはタイトなビートによって得られるグルーヴなどからファンクの要素を感じ取ることが出来ます。いずれもハイテンポでノリが良く、"人間パンサー"は次々とイメージが切り替わるMVも相まって歯切れの良い作品になっています。


その中でもChiquewaさんの"秘密"(2011.01.20)やりょう(シャレオツP )さんの"ハゲとともに生きる。-bald up jazz funk mix-"(2015.11.26)などのように、上記の2曲よりホーンなどの楽器の音が分厚く華やかなものでは、巡音ルカがボーカルを務めていることが多いです。アダルティなテーマの曲には艶のある巡音ルカの歌声がよく合いますが、そこでギャップを狙った"ハゲとともに生きる。"のような面白い作品もあります。


上記の作風とは異なりますが、EHAMICさんと初音ミクによるユニット・ehamikuの"つれてって"(2011.01.11)も挙げておきたい曲です。女性ヴォーカルのコーラス、ドラムやベースなどいずれも音が心地よく、気持ちのいいグルーヴを生み出しています。歌詞の音のリズムや語句の選び方が独特で面白いです。

 

■ファンクとロック

ファンクとロックを融合させたものもあり、ファンク・ロックと呼んだりするようです。ファンクとロックの組み合わせは<ボカロファンク>タグのなかで最も多い作風だと思います。たとえば、たーPさんの"Error"(2010.05.29)やれるりり(当社比P)さんの"狂躁ヒュプノシス"(2011.08.12)、青屋夏生さんの"復讐"(2013.07.06)のように、上記の作品よりもギターの音の存在感が強い印象を受けますね。



 

以上、ボーカロイドが歌うファンクでした。

それではまた次回。

/しま

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